麗らかな冬の日、海辺のシェアオフィス『SALT』に集まったのは「WSWSノマド合宿」のみなさま! 企業合宿かと思いきや、メンバーはそれぞれ、仕事も年齢も、所属も、拠点も、バラバラ。彼らは、〝旅をしながら、仕事をする〟をコンセプトに任意で集い、全国を舞台に〝ノマド合宿〟を行っているという、なんともおもしろい集まりなのです。今回は、東京、名古屋、山梨、遠くは新潟から、個性的な5人が集結しました。
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\今回のメンバー/
板羽宣人さん
株式会社ベビログ代表。公務員を8年間務めたのちに起業し、現在は主にEC事業に携わる。家族で住みたいときに住みたい場所に住む〝家族ノマド〟という暮らし方も実践中。
白濱優子さん
フリープランナー。イベントなど企画の仕事をしながら、「FMとおかまち(新潟)」でラジオパーソナリティとしても活躍。〝住み開き〟で知られる、ギルドハウス十日町の住人
堀惠磨人さん
株式会社マヒテック代表。オープンソースを利用した、中小企業向けのIT事業を立ち上げて2年目。理想のワークスタイルは、地元・静岡と東京との2拠点生活
鈴木啓太さん
ウェブプロデューサー/ディレクター。「暮しの手帖社」などのWebサイトを手掛ける。2012年に出身地でもある東京から、山梨県北杜市に移住。2014年からフリーランスに。
阿曽龍司さん
株式会社SOZOS(ソーゾーヅ)代表。WEBサイトや印刷物の制作、マーケティング調査など。愛知県奥三河地域への移住プロモーションにも携わる。
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WSWSノマド合宿って?
まずは、合宿の発案者であり、リーダーの板羽宣人さんにお話を伺いました。
※板羽宣人さん
-あらためてWSWSノマド合宿について教えてください。
板羽さん:「WSWSは、ウズウズと読みます。〝wisdom sharing workshop(知恵を共有するワークショップ)〟の頭文字をとってWSWS。合宿の目的は、大きくふたつです。まずひとつめは、日々のルーチンワークの中では、なかなか取り掛かれない次の展開…たとえば新たな事業プランとか〝緊急ではないけど重要なこと〟を考える時間をまとめて確保すること。ふたつめは、複数のメンバーが集まって知恵や視点を共有することで、アイデアを創出しやすくすること。コンセプトに賛同していただければ基本的に誰でも参加できますが、今は経営者やフリーランスの方が多いかな。2015年の1月からはじめて、今回の福岡で7回目になります」
白濱さん:「実は、合宿の正式名称はさっき決めたんですよ(笑)!これからもずっと続けていくには、ちゃんと名前が必要だよねって」
※白濱優子さん
板羽さん:「そう。これまでは、なんとなくモクモク合宿と呼んでた。黙々仕事をする、のモクモク。でも、これは言葉としてすでにあったし、仕事をすることだけが目的ではなかったので、今回、正式にWSWSノマド合宿と命名しました」
-仕事以外の目的は?
板羽さん:「現地でしかできない、体験、交流。こうして各地を訪れることで、全国に迎え、迎え迎え入れられる関係をつくること。合宿先は、毎回必ず、メンバーにつながりがある場所・迎え入れてくれる人がいる場所を選んでいます」
板羽さんは、世界を舞台に〝家族ノマド〟という暮らし方も実践中。合宿は、海外渡航などでリーダー不在の時を除いて、毎月一回のペースで回を重ねているそう。
-合宿に参加するメリットは?
白濱さん:「いろんな方の意見が聞けること、アイデアを共有できること。フリーランスで、とくに自宅で仕事をしていると、人の反応を見たりアドバイスをもらったりする機会は、思った以上に少ないですからね」
堀惠さん:「僕にとっては、先輩起業者に会って話が聞ける貴重な機会。自分のIT事業を立ち上げてまだ間もないので、わからないことや判断に迷うことも多くて。今年の3月に初めて合宿に参加したんですが、そのときは、進めようかどうか迷っていた顧客管理システムについて、いろいろとアドバイスをいただきました」
※堀惠磨人さん
鈴木さん:「僕は、自宅でも、別の場所でも、どこか遠くへ行っても、いつも同じパフォーマンスで仕事をすることを実践しようとしているので…合宿に参加するときは、その場所でしか出会えな人と話をしたり、その場所でしかできない経験をすることが楽しみですね」
※鈴木啓太さん
インフォグラフィックで日本がわかる!「JAPAGRA」
同じ場所に集っても、取り組む仕事はメンバーそれぞれ。合宿の時間を通して、インフォグラフィックのサイトを新しく立ち上げたのは、WEBサイトなどの制作を手掛ける阿曽さん。
阿曽さん:「僕は第1回目から参加してるんですけど、この合宿では本業以外のことに取り組もうと思って。日本文化を絵と文字で発信する、インフォグラフィックのサイトを立ち上げました。まだまだコンテンツは少ないですけど、これまでにまとめたのは、日本の世界遺産や、お城、ご当地ラーメンなど…。つい先日、オンラインストアもオープンしました」
※阿曽龍司さん
板羽さん:「目に見える合宿の成果としては、阿曽さんのこの取り組みが一番かも。回を重ねるごとにかたちになっていって、僕らも嬉しいですよ」
-感覚的に、かつ立体的に見ることができておもしろいですね。
阿曽さん:「なかなか伝えきれない魅力を可視化するのにも、インフォグラフィックは役立つと思いますよ。例えば、名古屋市は今年、〝国内主要8都市で行きたくない街ナンバーワン〟という調査結果を公表しましたけど、名古屋めしってすごくクリエイティブでおもしろい。ビジュアル化したものがこちらです」
※名古屋めし版は真ん中のマグカップと下のシート
「ね、ちょっと興味がわくでしょう。わかりやすくて楽しい自社メディアに育てて、いずれは地域のプロモーションに貢献できたらと考えています。訪日外国人も増えていますし、年内には英語版をリリース予定です」
一同:「年内に!?すごい!!!」
阿曽さん:「おっと、年内は言い過ぎたかな。大きな墓穴を掘ったかも…(汗)」
板羽さん:「いやいや!これも合宿で取り組むメリットですよ。個人で仕事をしていると、いくらでもサボれるけれど、他人の眼があるとそうはいかない(笑)。宣言したからにはやらないとカッコワルイってのも、いいプレッシャーになるじゃないですか」
※インタビュー後、JAPAGRA英語版は、昨年(12/8)にオープンしました。
【JAPAGRA日本語版】
http://jp-infographics.jp/
【JAPAGRA英語版】
http://jp-infographics.jp/en/
アイデアを生む〝寄り道〟を
−福岡移住計画が提案している多拠点ワーク『+Wander』では、寄り道と驚きを繰り返す、クリエイティブな働き方を提案しています。WSWSノマド合宿とも通ずる部分がありそうですね。
板羽さん:「新しいところへ行くと見るものすべてが初めてなので、脳が活性化しますよね。日常の行動範囲内だと何も考えずに歩けちゃうけど、見知らぬ土地ではどう行ったらいいのかもわからないので頭が常に動いている。それが発想を助けたり、生み出したりすることにもつながっているのかなと思います。働き方を考える上での〝寄り道〟は、移動時間が増えて非効率に見えて、実はすごく生産性が高まるんですよね」
鈴木さん:「移動する時間そのものも有益ですよ。飛行機でもバスでも電車でも、その間は強制的に隔離されているので、普段とは違う時間の使い方ができる。僕は山梨・東京間の移動が多くて、それも片道2時間半と長いので、移動中にすることをリストアップして有効に過ごせるようにしています」
白濱さん:「私も今回、新潟から東京に向かうバスの中で、これからつくりたいサイトの企画書をつくりました。バーッと一気に!」
鈴木さん:「結構集中できるんですよね。読書なんかにも向いている」
選択肢が、こころを自由にする時代
−暮らし方も働き方もどんどん多様化する中、みなさんのように自由な働き方を選ぶ人も増えてくると思います。これからどんな未来が待っていると思いますか?
白濱さん:「幸福度が上がるんじゃないかなと思います。終身雇用が崩れて不安に思う時代から、選択肢が増えて好きな働き方が選べると感じられる時代になった。実際私もフリーランスになって、幸せです。自分の心の向くままに、自由に好きな場所で活躍できるんですから」
阿曽さん:「たとえフリーランスでなくても自由に、たとえば、会社員でも個人的に仕事のオファーを受けたり、仕事をしたい人と仕事をしたりできるような時代になればいいですよね。大企業でも副業を許すところも出てきているし、そんな未来も近いんじゃないかなあ」
堀惠さん:「ITが進化して、自由な働き方が〝できる〟時代になりましたよね。5年前はルーターを持ち歩いても3G回線で3メガとかでしたけど…今では通信コストも下がり、さらにIoTなど様々なモノがネットに繋がるようにもなるなど、場所を選ばずに働ける環境が、どんどん整っていっています。今は、仕事も人も東京一極集中型ですけど、これからもっと地方へ分散化したらおもしろいなと思います」
ITの進化、ライフスタイルへの注目、日本では震災の影響も大きく、いろんなことが作用して、変化の目まぐるしい時代。「これからどんな未来になっていくのか、その変化をよく見ていたい」と話してくれたのは、二児のお父さんである鈴木さん。
鈴木さん:「今、上の子が小学生。大人になるころには、今新しいと言われている自由な働き方やそれを職業にする方たちは、もっと当たり前になっているでしょう。将来に備えて自分もその領域を知りたいし、子どもに何か教えられるようになりたいと思います。今は、現在進行形で起こっていることを興味深く観察しているところ」
板羽さん:「どんなワークスタイルが好きか、自分に合っているかということは、一人ひとりが決めることですよね。僕は自分の働き方や暮らし方を積極的に実験して、発信もしているけれど、必ずしも、自由な働き方が正解だとかそういうことを言いたいわけではありません。ただ、若い世代に〝こんな働き方もあるんだよ〟〝道は一つだけじゃないんだよ〟と示したいなぁと。敷かれたレールの上を歩かされていると思ったり、〝レールから外れる=終わり〟だと不安に思ったりしなくていい。いろんな選択肢が増えることで、生きることに息苦しさを感じる人が一人でも減れば、いい未来になるんじゃないかなと思います」
最後に、WSWS合宿の様子は板羽さんが下記のサイトにまとめられているので、こちらも是非ご覧ください。
http://wsws-nomad.strikingly.com