「+Wander(プラスワンダー)」とは、福岡移住計画が運営する、日本各地の共感する地域やスペースとの相互交流・利用のワーケーションプラットフォームです。その周辺に住むプレイヤーや地域資源を体感しながら、ワークとライフの境目を無くし、次の生き方や選択肢をつくっていきます。
この記事は「+Wander九州ツアー2020の第一回竹田市」に参加したライターの烏丸さんが感想を記事にしてくれましたのでご紹介します。

副業ライターの私が『ワーケーション』に参加してみたワケ

平日は本業の会社。休日は家にこもり黙々とライティング作業、一緒に住んでいる猫をのんびり眺め、家の中だけである程度の仕事も生活も送れる何不自由ない毎日。そんな変わりのない日常に満足していた。

しかし今、世界はコロナとの闘いの真っ最中(このツアーは3月2,3日に実施されたものであり現状況はまだ予想もしていなかったが)。駅でも空港でもニュースでも、テレワークを推奨される時代。そもそもテレワークという言葉は聞きなれているが、家もしくは煮詰まったらカフェに行く程度の私だった。

そんな中、いつもお世話になっている福岡移住計画が、大分県竹田市で“九州ワーケーションツアー”をやると聞いた。しかも体験記事を書くライターを探しているということで興味本位ではあったが、コロナ以前から、多様な働き方が求められる社会にあって、ちょうど似たような内容のライティング仕事もあったので、そんな価値観にも触れるべく参加してテレワーク体験記事を書いてみることにした。

そもそも、ワーケーションって何? 何語なんだろう?
この“ワーケーション”という言葉は、「働き方改革」という時代の流れの中で、企業が取り組みはじめたワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語であり、新しい働き方のようだ。
それならばいっその事、地方に拠点を移せばいいのにと思ったものの、ワーケーションのメリットはどうやらそれだけではないらしい。

日常で、同じ人、同じ環境で働いているとどうしても視野が狭くなってくる。日常とは違う場所へ移動し、そこの環境や人、価値観に触れることで、新たなアウトプットにもつながっていくのだという。つまり、都市と地方を行ったり来たりする移動こそが刺激になるのだと。割と変化を好まない私の日常とはわりと真逆の価値観でもあり新鮮である。

山を超えトンネルを抜けると、そこには歴史を感じられる街のいぶき

舞台は福岡市から車で約2時間30分。くじゅう連山など1000m級のどっしりとした山を抜けて、初めましての大分県竹田市。トンネルを抜けたその先の中心部には、いまも岡城城下町の歴史を感じさせる街並みや景観が色濃く残っていた。
いつもの福岡とは全く違う街の空気感にワクワクが膨らむ。

今回、私と一緒にワーケーションプログラムに参加したメンバーは業種はバラバラながら、ワーケーションや多拠点という働き方・生き方に関心のある福岡県内で活躍するみなさんが参加されていた。春休み前ではあるが、子連れ参加が多かったこともとても印象深い。

◯映像・スチールカメラマン・小金丸さん(写真前列左端)
◯「福岡移住計画」代表・須賀さん親子(写真前列左から2,3番目)
◯エディター兼ディレクター・板村さん親子(写真前列左から5,6,7番目)
◯シェアハウス運営・江頭さん親子(写真前列右端,中列右から2番目)
◯イラストレーター・浅上さん(写真中列右端)
◯Webディレクター・霜田さん(写真後列中央左)
◯エディター・窪田さん(写真後列右から2番目)

今回竹田市側で迎え入れて、現地をご案内してくれたのは、竹田市地域おこし協力隊・友永英治さん。友永さんご自身長年勤めた福岡市内の大手代理店を退職し、生まれ故郷であるこの地の為にUターンを決意して現在街づくりに没頭しておられるそう。

場所を移して、働くだけじゃない!2泊3日の竹田市ワーケーションの全容は?

今回、“ワーケーション”初参加の私にとっては、そもそも場所を移して働くことというのは頭ではわかっているものの、現地でどうやって仕事をするのか、何をするのか?あまりわかっていない。とはいえ、最初にも書いた通り、ワーケーションって日常を超えた先にある刺激を貰うものだったよね。ここは頭を柔らかくして参加してみよう!

まずは友永さんのご案内で竹田市の中心街をガイドしてもらいながら、町歩き。地方の城下町とはいえ、やはりこのご時世、竹田市もシャッター商店街で厳しい状況なのかな?

実際に町を歩いてみると、その想像はいい意味で少し裏切られた。町の中には、創業200年を超える老舗はもちろん、民芸や昔ながらの飲食店があたたかく迎え入れてくれる。それから何といっても、瓦屋根や漆喰壁といった昔ながらの建物を活かしつつ、おしゃれな空間にリノベーションされたセレクトショップなどが想像していたよりもずっと多い(この町の規模なら1店舗とかならわかるが、紹介してもらっただけでも5軒以上)。歴史情緒と、今のクリエイターやリノベーションの感覚の融合がなんとも心地いい雰囲気がある。友永さん曰く、空き家も増えてはいるが、市はまちづくり会社と連携して積極的に空き店舗や空き家の活用を行っているという。私の住んでいる町にはない温故知新の景観が“異国”に飛び込んだ気持ちにもなる。
異国というのは言い過ぎというわけでもなく、実は歴史的にも大名自らがキリスト教を保護する「隠れキリシタン」の文化があったとされ、町のあちこちに礼拝堂の遺跡も残っている。

そんな町並みを歩きながら、「今回は、町全体を知ってもらいながら、町全体をオフィスとして使ってもらいたいんです」と友永さん。え?町全体がオフィスってどういうこと?今回は、いろいろと普段にはない概念が飛び込んでくるな。実際参加してみると、2泊3日は移動して働くだけじゃない、さまざまな好奇心のスイッチが用意されていたのだ。

おちついたワークスペースを拠点としながら、竹田市を味わう。竹田ワーケーションのはじまり。

まずツアーのベース基地でもあり、ワークスペースの拠点となったのが『SHU』。ここはこの竹田市の移住・定住相談の窓口であり、地元の方が習いごとなどに通うコミュニティスペースだ。

町を案内いただいた友永さんの奥様・英子さんが現在運営するスペースでもある。ここは竹田市の文化展示室だったが、リノベーションされて今のカタチになったとのこと。中に入ると、なんとも心地よいカフェのようなやさしい空間が広がっているのだ。いわゆる行政の相談窓口というカタイ感じはまったくない。

(SHUを管理する、地域おこし協力隊の友永英子さん。今回アテンドしてくれた友永さんの奥様でもあり英子さん自身はIターンで竹田に飛び込んだ)

地域にこういったスペースがあると知見のない私のようなソトモノにとってはありがたい存在だなと思う。この日は竹田市役所 企画情報課 街未来創造室の中島さんに、これまでの竹田市の町づくりの流れや、今後計画されている都市計画の話をしていただいた。普段町づくりなんて、あまり参加したことの無い私にとっては、聞きなれない言葉も多かったものの、こうやって町って作られるのね、という新しい刺激と竹田市のこれからの未来像についてイメージすることができた。

(竹田市役所 企画情報課 街未来創造室の中島さん。竹田の町のこれまでとこれからのことをたくさん教えて頂いた)


(行政の方が説明してくれると聞いて、最初は少し緊張したが、竹田の皆さんは役所の方も自然体でだんだん打ち解けていった)

そうこうしているうちにランチタイム。地元ならではの食事が楽しめるのもワーケーションの醍醐味らしい。そうかそうか、今回はおいしいものをたくさん食べれるんだ(取材を理由に)。最初にご案内いただいたのは地元に愛される老舗食堂の『丸福食堂』。確かにお店はものすごい活気だ。ここの名物はなんと言っても「から揚げ定食」だ。ランチが出て来てびっくり。鳥ももまるごとのから揚げがドーンと。これは手づかみでかぶりつくのが美味しいと教えて頂き。私の普段の生活だとまず目にしないボリューム満点の一品だ。ペロリと平らげたけど(笑)。

(地元に愛される竹田丸福食堂の外観。とても雰囲気がある)


(名物のから揚げ定食、サクサクでジューシー。このボリュームで800円以下!)

[竹田の好奇心スイッチ その1]古き良き建物を活かした、ハイクオリティなリノベーション物件の衝撃・・

ランチ後にご案内頂いたのが、竹田市の町の特徴でもある、空き家・空き店舗のリノベーション事例だ。人口減少で、全国的に課題となっている空き家・空き店舗を、竹田市はとても上手に使っていることで有名らしい。

最初は、大分県出身、全国で活躍されるランドスケープデザイナーの団塚栄喜さん(http://www.earthscape.co.jp/works/)が作られた『perma』へ。“持続可能な未来を考える”がテーマのこの場所。元美容室を活かした空間に、アップサイクルな古道具やアウトドアのコレクションがハイセンスに配置されている。文字量の関係上、語りつくせないが遊び心と空間づくりのセンスは衝撃的。空間が好きなクリエイターならきっと強い刺激をもらえるはずだ。

(元パーマ屋さんのパーマと、持続性を意味するパーマネントを掛け合わせたネーミングが秀逸。古い外観だがセンスのオーラが入り口までにじみ出ている)


(スタッフの工藤千鶴子さんが空間ひとつひとつのこだわりを丁寧に説明してくださった)


(アウトドアや古道具が空間溶け込むように配置されている)


(permaは、クリエイターにとって刺激をもらえるワークスペースになりそう。とWebディレクターの霜田さんは、見学の間を縫いながらワークしていた。町全体がオフィスってこういうことか)

竹田市にはものづくりをするアーティストや職人さんの移住も多いという。次に、オールドミシンが目を引く革細工屋『Paisano』を見学させていただいた。栃木県出身のご主人が竹田市城下町にほれ込んで移住。古民家を改装した工房で、シンプルなデザインで滑らかな革の風合いが素敵な革製品を多くつくられている。全国で展示会に参加するなどファンも多く、お店には店主セレクトの陶器も販売されている。

[竹田の好奇心スイッチ その2]町づくりのハブは若手飲食店とゲストハウスにもアリ。民間若手プレイヤーの町への思いが町の引力をつくる。

今回の竹田市ワーケーションでは、やはり私的には食事がおいしかったことがとても記憶に残っている(やっぱり食いしん坊・・)。まずは、地元食材をふんだんに使ったイタリアンの『リカド』へ。ここは、知る人ぞ知る古民家リノベーションの素敵なお店だ。料理の美味しさはもちろんのこと、店主クワマンさんは、この地元で生まれ育ち、お店をハブとしながら、移住相談にのったり、若いプレイヤーと様々なイベントを仕掛ける若手のリーダー的な存在でもある。

(古民家をリノベした雰囲気のあるイタリアンレストラン『リカド』。町づくりのハブにもなっている人気のお店だ)


(クワマンさんのキャラクターも素敵で子供たちにも大人気だった)


(お酒にも合うおいしい品々だった。お願いすればコース料理もやってくれるようだ)

そして2軒目は、地元で修業した若手の相馬さんが、同じく地元の方に応援されながら古民家を借りてリノベーションした『和創作えん』へ。地元で料理を教えてもらい、ずっと地元に貢献したいと思ってきた。悩みに悩んだけど今やるしかな思って・・。親方も、町のみなさんもすごく応援してくれて。このご縁を一生大切にしたいと思い『えん』とつけました。と語る相馬さんが出してくれたお料理は、朝いちばんのこの日の為に一番で仕入れてくれた最高のお魚料理の数々。あまりのおいしさにメンバーも感動。

(この日のために、とれたての鯛と沖アラカブを仕入れて刺身や、てんぷらや、煮物にしてくれた。ぷりっぷりで本当においしかった。。)

そして、今回のワーケーションで宿泊でお世話になったのが、古民家ゲストハウス『CUE』だ。元々古くからつづく化粧品店だった物件を、堀場さんご夫婦がリノベーションしてつくられたこちらには、人気のパン屋『かどぱん』も併設。そのパンを使ったモーニングも大人気。そして『リカド』と同じく店主の堀場さんのキャラクターも素敵で、掘りごたつのある部屋で夜中までお酒を酌み交わしたことは忘れません。話した内容は忘れたけど(笑)。メンバーは思い思いに空間で過ごさせてもらったり、ラウンジや、こたつがあるお部屋で仕事をしたり。ここで長期滞在して働きたいなという参加者の声も多かった。

(築70年の立派な木造3階建ての建物をリノベーションした宿。居心地の良さと物件の作りに大人も子どももワクワクが止まらない)


(オーナーの堀場さん。この笑顔とお人柄に触れて、滞在が初めての私もかなりほっとした)


(ここも仕事しやすいなあ・・と、Webクリエイターの霜田さんは、早朝などの時間をうまく使いながら仕事を黙々とこなしていた。この人働き者だな)

あっという間に過ぎ去った、私の竹田市ワーケーション体験記の1日目はここまで。最初は、場所を移して仕事をするリフレッシュタイムくらいに思っていた“ワーケーション”。でも、こうやってたった1日過ごしてみるだけでも、この町に暮らす人々の営みや、活動に触れたり、地元にしかない食を体験することで、様々な刺激を受けることが出来たなと思う。

竹田市の人々は、とてもやさしく受け入れてくれて、最初の緊張はどこへやら。
さあ、2日目が楽しみに。後編に続きます。
(文:烏丸ねこ、写真:小金丸和晃)