「+Wander(プラスワンダー)」とは、福岡移住計画が運営する、日本各地の共感する地域やスペースとの相互交流・利用のワーケーションプラットフォームです。その周辺に住むプレイヤーや地域資源を体感しながら、ワークとライフの境目を無くし、次の生き方や選択肢をつくっていきます。
この記事は「+Wander九州ツアー2020の第一回竹田市」に参加したライターの烏丸さんが感想を記事にしてくれましたのでご紹介します。

ワーケーションは大人だけのものじゃない。これからの暮らし方を考えるヒントを得るために。

前編(1日目のおさらいもかねると、「ワーケーション」は、働き方を変えるため一つの手段だということは理解していたけど、場所を移動して、机を借りて仕事をするというイメージが良い意味で裏切られた。場所を移して日常の仕事をするだけでなく、その土地にある人や歴史、食との出会いを通して、自分の中にある好奇心に栄養を与える。そうすることで、日常の仕事の活力やアイディアにつながるのだ。この竹田市にはそんな私の好奇心のスイッチを押してくれるヒトやコトが沢山あった。

そして、まだ独身の私にとっては、これまた良いヒントになったのが、参加者のファミリーたち。「この時期に、これからの暮らしや子育てを改めて考えてみたい」というママさんや、学校が休みになってしまったので社会見学をしにという小学生連れの親子の真剣なまなざしはこれからの暮らし方を考える良いきっかけになった。ワーケーションは大人のものだけでなく、家族で実施するべきだという議論も出てきていることも知り、今回は家族向けの「竹田市ワーケーション」の視点でもレポートしてみようと思う。

(東京から移住してきた板村さんファミリー。福岡市に住んでいるが、もともとは、竹田市に住んでいたこともありこのツアーに参加。いずれは大自然の暮らしや子育て仕事を体現していきたいと語ってくれた)


(他拠点の暮らし方や、シェアハウスなどを事業としても推進している江頭さんファミリーとお友達のイラストレーターの浅上さん。現在は八女市に住む江頭さんだが、様々な場所に子どもを連れて行きそこで働く姿をお子さんに見せていきたいというパワフルママさん)


(小学校が休みになり、学校に行く代わりに社会を見せたいという福岡移住計画の須賀さんと一緒にツアーに参加した唯一の小学生。大斗君)

久住の山並みをバックにした雄大なキャンプ場がオフィスに変身!?大自然ワークで、身も心もリフレッシュ。

この日は、とても良く晴れていて、友永さんが「いいところで仕事をさせてあげるよ」と連れて行ってくれた先は・・。車に乗って、城下町を出て久住の山のほうへ。そっちは山しかないですよね・・と思いつつ、入っていった先はなんと「ボイボイキャンプ場」というキャンパーに人気のキャンプ場ではないか。

(ボイボイキャンプ場に到着。キャンパーにも大人気のキャンプ場。私のパートナーがよくキャンプをするのでここは知っていたけど竹田市にあることを知らない人は多いという)


(久住連山を一望できるキャンプ場。見よこの広大な景色を!!身も心も開放される)


(さあ、ここで仕事しようかーと。今回の案内役の友永さん)

最高のキャンプ場に到着して、管理棟兼カフェでそれぞれドリンクを注文し、各々にワークタイム。なんとWi-Fiも飛んでいるではないか。日本屈指ともいえる絶景のこのキャンプ場でドロップインってどんだけ贅沢なんだよ。普段は煮詰まったらカフェで仕事することが多かったけれども、この景色で文章を書けたら・・・。ライターの私の余白が増えまくって、小説でもかけそうな気持にもなってくる。

(家で子どもを見ながら仕事することが多いという板村さんは、子どもをあやしながら仕事をするのが本当に上手だった。こんな旦那さんならいいな・・。)


(小学生の大斗君は、テレワークならぬ、テレスクール。宿題を持ってきたり、この日に感じたことを絵にかいたりしていて関心した)


(こんな最高の場所で仕事ができるなんて・・と。Webクリエイターの霜田さんは1日目に引き続き黙々とワーク。どんな場所・状況でも仕事をするコツを聞いてみると慣れはあるけど、環境を楽しむ心が一番ですかねとクールに答えてくれた)

竹田の暮らしをのぞく、ホームステイ&ワーク体験

最高のキャンプ場でのワーク体験を後にした私たち一向は、竹田市でのリアルな暮らしも体感すべく友永さんのお宅へお邪魔させていただくことになった。福岡市から移住してきた友永さん。もともとはここ竹田市で生まれ育ち、今は竹田市の城下町から10分ほどの水の豊かなこの地区に惚れ込み、平屋を借りて住んでおられる。ダイレクトに家賃を聞いてみると、もともと空き家だった場所を市が仲介してくれて、数万ほどとか。水道もすべて山からのフレッシュな湧き水で年間の水道料は5,000円ほどだという。

(友永さんのご自宅。古い蔵付き、お庭に大きな金木犀の木が印象的な平屋に来年から小学校の娘さんとご家族3人で住まれている)


(水が豊かな地域に魅力を感じた。という友永さんのご自宅の横には、本当に透き通るような川が流れている。この川には、ヤマメが生息しているそうだ)


(和風の平屋をお二人のセンスで好きなモノや猫に囲まれてとても素敵なご自宅だった)

小川のほとりで摘んだクレソンやお隣さんからもらったトマトなど、ここでしか手に入らない食材をつかったおいしそうなお料理が並ぶ。友永さんの奥様である、英子さんお手製のお料理だ。料理の先生でもある英子さんが丁寧につくられたらお料理は、素材の味がとても生きていて、食べれば食べるほど元気がでてくるような素晴らしい食事だった。そして、こうやって大人数で囲む食事はどこか暖かく懐かしくて。ついついみんなお代わりをしていた・・。そう、という私も。

(素材の味を活かした丁寧なお料理。竹田でとれたお野菜や卵、お米などは本当に体を元気にしてくれる味がした)


(子どもたちももりもり食べていた。食育とはこういうことを言うのだな)

食後は、スキルアップの時間へ移る。今回ワーケーションって面白いなと思ったのは、本業を持ち込んでただ仕事をこなすだけでなく、この土地にいる人のスキルも教えてもらえること。友永さんがお得意なDIYスキルを活かしたアクティビティとして、基本の箱づくりにチャレンジさせてもらった。一枚の板から必要な材料を切り出し、ビス留めしていくというシンプルな工程ながら、実際にやってみると難しい! 板が歪んで仕上がりがいびつになってしまったり、打つ位置がズレて釘の先が出てしまったり…。でも、普段使うことのない本格的な道具を触れたことがとても刺激になったようだった。

(ほぼプロ仕様の道具の使い方を友永さんが丁寧に教えてくれた)


(そのあとは実践。失敗しながらもやったことのないことをやることで、刺激や好奇心のスイッチが押される)



(子どもたちにとっても、この授業はワクワクが止まらなかったようだ。子どもの好奇心旺盛なはじける笑顔が印象的だった)


(初めてにしては、上出来なかわいい木の箱が完成した)

友永さんの暮らしを少しだけ覗かせていただき、私の普段の生活とはやはり違う、まさに“非日常”がここにはあった。こんな暮らし方があるんだ・・都市に住んでいる私にはなかなか感じられないものだった。でも悪くない。むしろ無心に楽しんでいる私が居た。以前は私同様に都市部で暮らしていたという友永さんご夫婦に、福岡市を出て始めた、今の暮らしについてお話をうかがってみた。

ーーそもそも竹田市への移住のきっかけは何だったのでしょう?

英治さん:生まれ故郷だからというのもありますが、前職の広告代理店で鹿児島への移住促進の仕事をしていて、移住者の方とふれあう機会があったことですかね。たくさん稼ごうとか名前を残そうとかの考えはなく、楽しそうに暮しているのを見て、人生には別な豊かさがあることを目のあたりにすると同時に、勇気をもらいました。

英子さん:帰省などで帰るたびに町が元気になっていて、地元の若い子から「兄貴が帰ってきてくれたら」と慕われるのを見るうちに、彼(英治さん)の自己実現ができる環境が竹田にあるように思いました。だから「やっぱり竹田がいい(移住したい)んだよね」と言われた時に、違和感なく受け入れられたんだと思います。

ーーいまの私と同じように異なる日常(価値観)に出会ったんですね。実際に移住してみて感じていることはありますか?

英子さん:田舎暮らしはのんびりかなぁと思っていたけれども、意外に…忙しいんですよね。来る前は、季節を感じながら毎日穏やかに生きるのを想像していたんです。でも実際は、昔ながらの地域のお祭りに参加したり、若手が企画したフェスを手伝ったり、いただき物の野菜を腐る前に下処理してしまうとか…すべてに手を出していたら自分の時間なんて一切なくて(笑)。

英治さん:早く地域に馴染みたいという思いで頑張っていたんですけど、半年ぐらいで欲張るのはやめました。なぜなら、頑張りすぎると自分も周りも疲れてしまうんですよね。これからは、もともと好きなものづくりの時間も確保できるように工夫してやっていきたいとおもっています。

英子さん:わたしは、先日家族で泊まった佐賀県・有田町にある『TIMERの宿』が掲げている「暮らしの中に仕事がある暮らし」というテーマにすごく共感して。これから竹田でもそれができたらいいなと思います。わたしたちの日々の暮らしに共感が得られれば、それを体験しに来てくれる方がいて、自然とそれが価値に変わっていくと信じています。

ーーなるほど、物事を捉える価値観にも変化が出てきていますね。そしてそれを楽しんでいる。今回私たちは、日常とは違った環境でさまざまな価値観に触れるために竹田市を訪れていますが、そういった取り組み(ワーケーションという働き方)についてはどう思われますか?

英治さん:竹田の人たちって、地元に残るか出ていくかの2択なんですよね。だけど、こうして外の人が外の仕事をワーケーションという形で成立させることできる新しい動きがある。「こんな選択肢があるんだ」ということを中高生に知ってもらえれば、これからの生き方が柔軟になってくると思います。都会にあるものだけが仕事じゃないですし。
またワーケーションする方にとっては竹田を好きになってもらう可能性もあり、人口減が緩やかになるかもしれません。そんな影響があれば年齢層が高い方たちのワーケーションへの理解も進むと思います。

英子さん:竹田にはまだまだ空き物件が残っていますから、そうした理解が地方に増えると、空き家を活用したコワーキングスペースやサテライトオフィスとしての利用につながるかもしれません。それは町にとっても理想的ですよね。

竹田市で2日3日ワーケーションをしてみて感じたこと。参加者のフィードバックを聞きながら。

竹田市で2泊3日を過ごした私たちは、最後にまちづくりたけた株式会社さんを訪問。竹田市の職員さんも交えフィードバック会をおこなった。自分たちで感じて終わりではなく、感じたことを言語化して、町の人にプレゼントして帰るのだという。

参加者側の感想で印象に残ったのは、狭いエリアにショップや温泉などの見どころが詰まった町のコンパクトさ。そして、山や川などの自然の豊かさの魅力。そして好奇心が刺激される、想いある町の人々とのさまざまな出会いがあったということ。クリエイターも多く参加した今回、これだけ魅力的な空間があるならばと、中には2泊3日では物足りず、1週間以上滞在したいという声もあがっていた。ファミリー層からは、子どもたちを育てる環境としての魅力や、短期滞在できるような拠点がいくつかあれば、定期的に通ってみたいという声も出ていた。

受け入れ側の友永さんや行政のみなさんからは、町自体には魅力がたくさんあるけれども、それらをうまく情報発信できていないこと。急に仕事の対応をしなければと言われた時、すぐに「ここで!」と返せないことなど受け入れ体制についての課題が挙げられた。まず竹田を知っていただきつつ、皆さんもワークや暮らしを体験して、いきなり移住は無理でも、仕事を持ち込んで、ここで少しでも暮らせるということを知っていただけたことが何よりもうれしいと語ってくれた。

参加した私はというと・・・竹田市を好きになったのはもちろん、次に来た時に、きっと竹田市の人々がよく来たねーと、言ってくれそうで。今回の参加者や、竹田の人たちとのつながりが出来てことがとてもうれしい。

また、人によってさまざまな働き方、生き方の捉え方があることを知り、視点や知見を広めることができた。参加当初は、日常の仕事を持ち込んで、田舎でこもって原稿を書き上げるという目標は叶わなかったが・・ライティングの仕事の中でたった一言を生み出すのに苦労することもあり、今回得た視点からのアプローチが今後のライティング業に反映できればきっと私の仕事の幅も広がってくると思う。これは今回得られた目に見えない価値だなと思う。ワーケーション後のこの記事もスラスラを書けているのは、きっと私の脳の好奇心を沢山刺激できたからに他ならない。そう。ライターとしてパワーアップしたではないか。

そしてもちろん同行していた子どもたちも、宿題をしたり両親と一緒にいることで、大人たちが、パソコンに向かって作業するだけが仕事というわけではなく、まるで遊んでいるかのように、笑顔で場所を変えて仕事をしている姿をみて、将来彼らの選択肢が広がるかもしれないなとも思った。

インターネットでどこでもつながる時代。そんな環境だからこそ、地域とつながれる働き方を体験してみるのもいいかもと、今回の竹田市ワーケーションに参加して感じた。竹田のみなさま、また来ます!

(文:烏丸ねこ、写真:小金丸和晃)

「+Wander(プラスワンダー)」では、地方におけるワーケーションの可能性を関心のあるワーカーと巡りながら探っていきます。ワーケーションの受け入れに関心のある自治体、団体の皆さまと一緒に枠組みをつくっていければと思います。次回の候補先も近日公開しますので、参加ご希望の方は、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。
▽お問い合わせ
https://pluswander.com/contact/